第4回『営衛生会』が語る月・昼夜・睡眠の医学

衛気は月とともに巡る


目次

古典のことば①

衛氣者,晝日行於陽二十五周,夜行於陰二十五周,周於五藏。

『黄帝内経・霊枢・衛気行』


書き下し文

衛気なる者は、

昼は陽を二十五周し、

夜は陰を二十五周し、

五臓を周る。


現代語訳

衛気は昼間には身体の表面(陽)を巡り、

夜になると身体の内側(陰)へ入り、

五臓を巡って身体を養います。


古典のことば②

營在脈中,衛在脈外。

『黄帝内経・霊枢・営衛生会』


書き下し文

営は脈中に在り、

衛は脈外に在り。


現代語訳

営気は血脈の中を流れ、

身体を栄養します。

衛気は脈の外を巡り、

身体を守る働きをしています。


はじめに

私たちは毎日、

朝になると目が覚め、

夜になると眠くなります。

当たり前のことのようですが、

『黄帝内経』では、この昼夜の変化もまた、

人体の「気」の運行によって説明しています。

その中心となるのが、

衛気

です。

衛気は単なる防御の気ではありません。

昼は活動を支え、

夜は眠りを導き、

生命のリズムそのものを司る存在として描かれています。


衛気とは何か

東洋医学では、

気にはさまざまな種類があります。

その中でも衛気は、

体表を巡り、

外邪から身体を守る働きを担っています。

しかし、

衛気の役割はそれだけではありません。

『霊枢・衛気行』では、

昼と夜で巡る場所が変わることが詳しく述べられています。

昼は陽を巡り、

夜は陰へ帰る。

これが衛気の基本的な運行です。


なぜ夜になると眠くなるのでしょうか

現代医学では、

睡眠には体内時計やホルモン、自律神経などが関わることが知られています。

一方、『黄帝内経』では、

夜になると衛気が体表から五臓へ帰ることで、

身体は活動から休息へ切り替わると考えます。

つまり、

眠るとは、

衛気が「内へ帰る現象」なのです。


月と衛気の関係

ここで第2回の『霊枢・歳露論』を思い出してください。

そこには、

月齢によって

衛気の状態も変化すると書かれていました。

つまり、

衛気は

昼夜のリズムだけでなく、

月齢という約29日周期にも応じて変動すると考えられていたのです。

東洋医学では、

人体は

一日のリズム、

一年のリズム、

そして月のリズムの中で生きています。


営気と衛気

『営衛生会』では、

営気と衛気を対にして説明しています。

営気は

血脈の中を巡る気。

衛気は

血脈の外を巡る気。

営気は

栄養し、

衛気は

守ります。

そして両者は、

昼夜を通して互いに協力しながら生命活動を維持しています。


日本伝統鍼灸から考える

伝統鍼灸では、

皮膚を診ることを非常に重視します。

皮膚の温度。

湿り気。

緊張。

柔らかさ。

これらは、

衛気の状態を知る大切な手掛かりになります。

また、

脈診では営気を、

切経や切皮では衛気を診るという考え方もあります。

つまり、

診察とは、

営衛の調和を診ることでもあるのです。


現代臨床への応用

『黄帝内経』の衛気の概念を現代医学の一つの機能に置き換えることはできません。しかし、昼夜の生活リズムや休息と活動の切り替えを大切にするという考え方は、現代にも十分応用できます。

例えば、

・夜更かしを続けると、衛気が内へ収まるリズムが乱れ、十分な休息が得られにくくなる。

・昼間は適度に身体を動かし、夜は照明や刺激を控えて心身を落ち着かせることで、自然な眠りにつながりやすくなる。

・月の満ち欠けに合わせて睡眠の質や体調を記録すると、自分自身のリズムを知る手掛かりになることもあります。

古典が教えるのは、「自然のリズムに身体を合わせる」という姿勢です。


古典を味わう

衛氣者,晝日行於陽,夜行於陰。

この一文は、

昼は活動し、

夜は休むという、

生命本来の姿を教えています。

夜になっても活動を続ける現代社会だからこそ、

『黄帝内経』の言葉は、

私たちに自然へ立ち返る大切さを静かに語りかけているようです。


次回予告

第5回 月とともに養生する

『黄帝内経』を現代生活に生かす

これまで学んできた「天人相応」「月齢と気血」「刺鍼法」「衛気の運行」を踏まえ、最終回では、月のリズムを日々の養生や暮らしの中でどのように生かせるのかを考えていきます。

古典の知恵は、現代を生きる私たちの毎日の健康づくりにも活かすことができます。

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