【2026年 夏至の養生③】貝原益軒も伝えた「足心」の養生―薄荷・松葉・生姜の足湯レシピ

シリーズ最終回は、「下を温める」養生の実践編です。

今回ご紹介するのは足湯。しかも、ただのお湯ではなく、薄荷・松葉・生姜など薬草を組み合わせた、今年の夏に特に効く足湯のレシピです。

そしてこの足湯、実は江戸時代の儒学者・貝原益軒が『養生訓』の中ですでに伝えていた養生法とも深くつながっています。


目次

貝原益軒が「足心」として記した湧泉

貝原益軒(1630〜1714)は、85歳という当時としては驚くべき長寿を全うした江戸の儒医です。その晩年に著した『養生訓』は、自らが実践した養生法を後世に伝えた名著として知られています。

その巻第三「慎病」の「導引の術」に、こんな一節があります。

「足の心(うら)湧泉の穴と云、片足の五指を片手にてにぎり、湧泉の穴を左手にて右をなで、右手にて左をなづること、各数十度。」

現代語に直すと——

足の裏の中心、土踏まずのくぼみを「湧泉の穴」という。片足の五本指を片手で握り、湧泉の穴を左手で右足、右手で左足をそれぞれ数十度ずつ撫でる。

益軒はこれを「術者のする導引の術」として紹介し、「暇のある者は毎日これをやるとよい」と締めくくっています。

「足心」という言葉で足の裏の中心を指し、そこに湧泉の穴があると平易に記した益軒。300年以上前に書かれた言葉が、2026年の夏の養生にそのまま通じるのは感慨深いものがあります。


足湯は「撫でる」の現代的な実践

益軒が教えた「湧泉を撫でる」という手技と、足湯の目的は同じです。

湧泉を温め、刺激することで——

効能東洋医学的な解釈
上の熱を下ろす上実下虚・冷えのぼせの改善
血行促進寒邪による気血の滞りを解く
発汗・解表体表の邪気を軽く散らす
安神・鎮静心の熱を冷まし、動悸・不眠・不安を和らげる
腎を温める本年の歳運(水運太過)による腎の冷えを改善する

足湯に浸かりながら湧泉を親指で押すと、益軒の「撫でる」と足湯を同時に実践できます。


足湯に入れると効果が高まるもの

今年の夏至前後は「上半身の熱を下ろし、下半身の冷えを温める」ことが養生の基本。足湯に薬草を加えることで、その効果をさらに引き出すことができます。


薄荷(はっか/ミント)

性質:涼性・辛味

夏至前後の「火が三重に重なる」時期に特に向いています。頭部や上半身にこもった熱を散らし、気を巡らせます。のぼせ・目の充血・頭痛を感じるときに。

使い方:乾燥薄荷葉ひとつかみをお茶パックに入れて足湯へ。生葉をそのまま浮かべても爽やかです。

ポイント:涼性のため、冷え症が強い方は生姜と組み合わせると良いバランスになります。


松葉(まつば・まつのは)

性質:温性・苦甘味

古来より「不老長寿」の薬草として珍重されてきた松葉。血行を促進し、関節のこわばりを和らげます。下半身の冷えと水の滞りを温め流す働きがあります。益軒も松を大切にしていたことが著書からうかがえます。

使い方:生の青松葉をひとつかみ、そのまま桶に入れて浸かる。足で踏みながら浸かると松脂の香りが広がり、気も巡ります。


生姜(しょうが)

性質:温性・辛味

強力に体を温め、寒邪を散らす。2026年の「水運太過」対策として最も基本的な素材です。薄荷の涼性を和らげる役割も担います。

使い方:薄切り生姜5〜6枚、またはすりおろしてお茶パックに入れて。


塩(あら塩)

性質:寒性・咸味

東洋医学では、咸(塩辛い)味は腎に入るとされます。腎を補いながら、皮膚の清潔を保ち、殺菌・消炎の作用も。

使い方:大さじ1〜2杯。塩+生姜の組み合わせは温補腎陽(腎の陽気を補い温める)の効果が高まります。


よもぎ

性質:温性・苦辛味

寒湿を取り除き、経絡を温める薬草として古来から用いられてきました。実はお灸に使う「艾(もぐさ)」の原料もよもぎです。腰冷えや婦人科系の不調が気になる方に。

使い方:乾燥よもぎをお茶パックに入れて。


今年の夏のおすすめ組み合わせ

状態おすすめの組み合わせ
のぼせ・頭が熱い薄荷+塩
下半身が冷える松葉+生姜
冷えのぼせ(上熱下寒)薄荷+生姜
全身の疲労・むくみよもぎ+塩
バランスよく整えたい松葉+薄荷+塩

足湯の基本作法

湯温        :40〜42℃(夏至前後はやや低め40℃で)
時間        :15〜20分
水位        :くるぶしの上、三陰交が浸かるくらいまで
タイミング  :就寝1時間前が最適
終わり方    :足を拭いたらすぐ靴下を履き、冷やさない

浸かりながら湧泉を親指でゆっくり押す——これが益軒の「撫でる」と足湯を重ねた、今年の夏の養生の形です。


おわりに

三回にわたってお伝えしてきた「2026年夏至の養生」をまとめると——

  1. 今年の夏は「火が三重に重なる」特殊な時期。急激な寒暖差と上実下虚に要注意
  2. 「上を冷まし、下を温める」が養生の基本方向
  3. 貝原益軒が伝えた「足心(湧泉)」を温め、薬草の足湯でその効能を引き出す

難しいことは何もありません。就寝前の15分、桶にお湯を張って松葉や薄荷を浮かべる。それだけで、300年前の知恵と今年の運気の両方に応じた養生になります。

どうか今年の夏を、「急がず・冷やさず・温めすぎず」のバランスで穏やかにお過ごしください。


【2026年 夏至の養生】シリーズ 完

  • 第1回:火が三重に重なる夏――干支が告げる今年の気候とからだへの影響
  • 第2回:急激な寒暖差への対応――食事・入浴・ツボ養生
  • 第3回:貝原益軒も伝えた「足心」の養生――薄荷・松葉・生姜の足湯レシピ
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