第4回 緑豆は夏の医者

― 宮廷で受け継がれた”熱を鎮める一椀”―
夏の宮廷の台所には、いつも緑豆が備えられていました。王様の食膳にも、料理人たちのまかないにも、そして農民たちの食卓にも。身分の隔てなく夏を支えたこの小さな豆には、「夏の医者」と呼ばれるほどの力があると考えられてきました。
緑豆粥
緑豆をやわらかく煮て米と合わせた緑豆粥は、消化に優しく、それでいて身体にこもった熱を静かに鎮める働きがあるとされてきました。食欲が落ちる夏の盛りでも、するすると喉を通るこの一椀は、胃腸に負担をかけずに栄養を届ける知恵の料理です。
緑豆湯
豆を煮出した汁だけをいただく緑豆湯は、より軽やかに熱を鎮める飲み物として親しまれてきました。冷やして飲むことも多いのですが、宮廷ではやはり、冷たすぎない状態でいただくことが勧められていました。
緑豆の煮汁
豆そのものを食べずとも、煮汁だけを取り出して常備しておく家庭も多くありました。暑さで火照ったとき、喉が渇いたとき、少しずつ口にすることで、身体の内側から熱を落ち着かせる養生法として受け継がれてきたのです。
暑熱を除く
緑豆は、身体にこもった余分な熱——暑さによって溜め込まれた熱——を外へ導く働きがあるとされてきました。特に、暑さで顔がほてったり、身体がだるく重く感じたりするときに、緑豆を用いた料理が好んで取り入れられました。
のどの渇き
夏の渇きは、水を飲んでもなかなか収まらないことがあります。これは、単に水分が足りないのではなく、身体にこもった熱が渇きを生んでいるためだと宮廷では考えられていました。緑豆は、その熱そのものを鎮めることで、根本から渇きを和らげる食材とされてきたのです。
夏の吹き出物
暑さと湿気が重なる季節には、肌にも不調が表れやすくなります。緑豆には、身体の内側にこもった熱や湿気を取り除く働きがあるとされ、夏場の肌荒れや吹き出物の養生にも用いられてきました。
酒毒・食あたり
宴の多い宮廷では、酒や脂の多い料理による胃腸の不調も少なくありませんでした。緑豆はこうした「食あたり」や「酒毒」を和らげる食材としても重宝され、翌朝の胃腸を優しくいたわる一椀として重宝されてきました。
宮廷の一話
夏の台所では、 緑豆を切らすことはありませんでした。
王様も、 料理人も、 農民も、
暑さを鎮めるために 緑豆をいただいたのです。
チャングムの養生ことば
「熱は氷で追い払うものではありません。 食べ物で静かに鎮めるものです。」


