水の不思議 第4回 科学が明かす、水という特殊な物質

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「当たり前」すぎて気づかない不思議

これまで2回にわたり、甘露水や聖水など、文化や信仰の中で特別視されてきた水についてお話ししてきました。今回は少し視点を変えて、化学・物理の観点から見た「水そのものの不思議」に迫ってみたいと思います。

水はあまりに身近な存在なので、その特殊さになかなか気づきません。しかし実は、水は他の物質と比べてかなり「変わり者」な性質を持っています。

氷が水に浮くという奇跡

普通、物質は液体から固体になると分子がぎゅっと詰まり、密度が高くなって沈みます。ところが水は違います。氷は液体の水よりも密度が低く、水に浮くのです。

これは水分子が凍る際に、規則正しい六角形の格子構造を作り、分子同士の間にすき間ができるために起こる現象です。もしこの性質がなければ、冬に湖や海は底から凍りつき、多くの水生生物が生きられなくなっていたでしょう。氷が表面に張ることで下の水が凍らずに済み、生命が守られている——これは地球の生態系を支える、水の隠れた大仕事なのです。

「万能の溶媒」としての水

水は「ユニバーサルソルベント(万能溶媒)」と呼ばれるほど、非常に多くの物質を溶かすことができます。これは水分子がプラスとマイナスの電気的な偏り(極性)を持っているためで、塩やミネラル、糖など、さまざまな物質を分子レベルで取り込むことができます。

私たちの体の中でも、この性質が大いに役立っています。血液が酸素や栄養素を全身に運べるのも、細胞の中で様々な化学反応が進むのも、水が優れた溶媒として働いているからです。

比熱が高いという性質

水はまた、温度を変化させるのに多くの熱エネルギーを必要とする「比熱の高い」物質です。そのため、海や湖は昼夜や季節の気温変化の影響を受けにくく、周辺の気候を穏やかに保つ働きをしています。

私たちの体温が急激に変化しにくいのも、体の大部分が水でできているおかげです。人間の体は成人でおよそ60%が水分といわれており、この水の性質のおかげで、体温という生命活動の土台が安定して保たれているのです。

表面張力と毛細管現象

水滴が丸くなったり、コップいっぱいに水を注いでも少しの間はこぼれなかったりするのは、水分子同士が強く引き合う性質(水素結合)によるものです。この表面張力のおかげで、植物は根から吸い上げた水を、毛細管現象によって高いところまで運ぶことができます。梨をはじめとする果物がみずみずしさを保っていられるのも、この水の性質と無関係ではありません。

科学と伝説が重なるところ

こうして見てくると、古代の人々が甘露水を「神秘的な力を持つ水」と考えたことは、あながち的外れではなかったのかもしれません。もちろん、私たちの体を潤し支えているのは超自然的な力ではなく、水分子が持つ物理化学的な性質です。しかし、その性質自体が、他の物質にはない極めて特殊なものであることは、紛れもない事実なのです。

次回予告

最終回となる第5回では、こうした水の性質を踏まえたうえで、私たちの体と水の関係、そして日々の生活の中で水とどう向き合っていけばよいかについて、シリーズのまとめとしてお届けします。

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