竹の中を流れる「生命の水」を考える
竹を見るとき、私たちは普通、その「形」を見ています。
まっすぐ伸びた幹。美しい節。青々とした葉。そして、中が空洞になった竹筒。
しかし、その竹の内部では、目には見えない生命活動が続いています。
その一つが、水の移動です。
竹は、水を運んでいる
竹は植物です。当然、根から水を吸い上げます。けれど竹の場合、その水の動きには興味深い特徴があります。
竹は地下茎によって群落をつくります。つまり、一本一本が完全に独立しているのではありません。
研究では、竹の地下茎を介して、既存の竹から新しく伸び出した竹へ水が移動することが確認されています。特に発芽初期には、地下茎を通じた水の移動が、新しい竹の成長を支えている可能性が示されています。
これは、とても竹らしい生命の姿ではないでしょうか。
一本の竹が、自分だけで生きているのではない。古い竹が、新しい竹を支える。地下でつながり、水を渡す。そして、新しい竹が空へ伸びていく。
「竹水」という言葉
竹の内部に存在する水分や、竹から採取される液体を「竹水」「竹汁」などと呼ぶことがあります。
中国などでは竹汁が伝統的に利用されてきた歴史もあります。研究では、竹汁に含まれる成分について分析も行われています。
ただし、ここは大切なところです。
「竹水」という名前だけを聞いて、
「飲めば○○に効く」
と単純に結びつけるべきではありません。
竹から採取される液体には、採取方法や種類による違いがありますし、健康効果についても個別に慎重に考える必要があります。
今回、私が注目したいのは「薬効」ではありません。もっと根本にある、
竹の中を水が動いている
という生命現象です。
竹の中の「昇る水」
竹を一本、立てて想像してみてください。
下には、土があります。その土の中には、水があります。根がその水を受け取る。そして竹の身体を通って、上へ向かう。やがて竹は、天へ向かって伸びていく。
この姿を、東洋医学の言葉で眺めてみると、とても面白い。
「水」と「木」
五行でいえば、竹はもちろん植物ですから「木」の象徴として眺めることができます。
一方、その生命を支えているのは「水」。
水を受け、木として伸びる。
つまり、
水 → 木 → 上へ伸びる
という生命の流れです。
東洋医学では、身体についても「昇る・降りる」という働きを重要視します。
上へ行くもの。下へ行くもの。外へ向かうもの。内へ向かうもの。
身体は、ただ物質が詰まった器ではなく、
気・血・津液が動いている存在
として考えられます。
そう考えると、竹はとても分かりやすい自然界の教材になります。
竹は「中空」である
そして、竹を考えるうえで絶対に外せないのが、
中が空いているということです。
竹は、外側にしっかりとした壁を持っています。しかし、その中心は空洞です。
この「空洞」は弱さではありません。むしろ竹を竹たらしめている特徴の一つです。
風が吹けばしなう。強く押されれば曲がる。しかし、簡単には折れない。
ここに東洋的な生命観を重ねてみると、
「空いていることは、弱いことではない」
という気づきがあります。
余白がある。受け入れることができる。だからこそ、流れることができる。
「水が昇る」には、器が必要
これは東洋医学を学ぶうえでも、とても面白い視点です。
水が動くには、通り道が必要です。竹は、その通り道を持っています。
そして竹には節がある。節がありながら、その内部は一本の連続した構造としてつながっています。
だから、節があるのに、流れは止まらない。
ここが面白い。
人生にも節目があります。身体にも節があります。季節にも節があります。しかし、節目があるからといって生命の流れが終わるわけではありません。一つの節を越えて、また次へ進んでいく。
竹は、そのことを黙って教えてくれているようです。
古い竹から、新しい竹へ
さらに竹には、もう一つの魅力があります。
竹林では、古い竹と新しい竹が同じ場所に存在します。地下では根茎によってつながり、そこから新しい竹が出てくる。
研究でも、既存の竹から新しく生えた竹へ水が移動する現象が確認されています。
つまり竹林では、
「自分が吸った水を、自分だけのものにしない」
とも言えるのです。
古いものが新しいものを支える。地中でつながっている。そして新しい竹が、また空へ向かって伸びる。
これはまさに、
生命の循環
です。
竹水から学ぶこと

竹水を「薬」として見るのではなく、
「生命を流す水」として見てみる。
すると、竹という植物がまったく違って見えてきます。
地から水を受ける。身体を通して上へ運ぶ。節を越える。空へ伸びる。そして、新しい生命へ水を渡す。
竹は、「水を抱えて天へ向かう生命」なのです。
そして、この竹が「異界との境界」や「天と地をつなぐもの」として登場する有名な物語があります。
そう。『竹取物語』です。
次回は、いよいよ竹の中から現れた少女、かぐや姫を「竹の霊性」という視点から眺めてみましょう。


