宮廷女医・チャングムと学ぶ 夏の養生 第3回 “参鶏湯(サムゲタン)”

参鶏湯― 「以熱治熱」の知恵 ―

真夏の炎天下、湯気の立つ熱々の参鶏湯(サムゲタン)を汗だくになりながらいただく。韓国の夏の光景として知られるこの習慣には、「以熱治熱」——熱をもって熱を治める——という、宮廷医術の逆説的な知恵が息づいています。

伏日(ポンナル)

韓国には「三伏」と呼ばれる、一年でもっとも暑いとされる三つの日があります。この日には古くから、身体に力をつける温かい料理をいただく習慣がありました。暑さで消耗しきった身体に、あえて熱いものを与えることで、内側から力を取り戻す——これが伏日の養生の考え方です。

冷たいものを求めがちな時期に、あえて熱いスープをいただく。矛盾しているようで、実はこれこそが宮廷医術の真髄です。外の暑さに対抗して身体を冷やすのではなく、内側の力を補うことで、暑さに負けない身体そのものをつくっていくのです。

参鶏湯(サムゲタン)

若鶏にもち米を詰め、高麗人参やなつめ、にんにくとともにじっくり煮込む参鶏湯は、まさに「以熱治熱」を体現する一皿です。鶏肉は気血を補う力があるとされ、消耗しきった夏の身体にとって、もっとも取り入れやすい滋養食のひとつでした。

高麗人参

高麗人参は、宮廷医術において「元気の根本を補う」生薬の代表格です。夏の暑さで気が消耗しているとき、高麗人参はその気を根本から補い、身体を内側から支える働きがあるとされてきました。参鶏湯にひとかけらの高麗人参が入っているのは、単なる風味づけではなく、明確な養生の意図があってのことなのです。

棗(なつめ)

棗(なつめ)は、消化器系の働きを穏やかに支え、精神を安定させる食材として、宮廷料理に欠かせないものでした。参鶏湯の優しい甘みの多くは、このなつめによるものです。強い薬効を持つ人参の働きを和らげ、全体を調和させる役割も担っています。

大蒜(にんにく)

大蒜(にんにく)は身体を温め、巡りを良くする働きがあるとされます。参鶏湯に大蒜(にんにく)を丸ごと加えることで、身体の芯からじんわりと温まり、汗とともに滞っていたものを外へ押し出す助けになると考えられてきました。

胃腸を養う

参鶏湯の真の目的は、単に身体を温めることではありません。もち米や鶏肉、なつめといった消化に優しい食材を組み合わせることで、夏に弱りがちな胃腸そのものを養うことにあります。胃腸が元気であれば、そこから気血が生まれ、身体全体を支える力になっていくのです。

宮廷の一話

暑さに勝つのではありません。 

暑さに負けない身体を育てるのです。

チャングムの養生ことば

「胃が元気なら、 人は暑さにも負けません。」

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