― 夏の終わりに、肺を潤す贈りもの “梨”―
皆様、ここまでご一緒くださり、ありがとうございます。チャングムでございます。
五味子茶、参鶏湯、緑豆——夏の養生をひとつずつお話ししながら、私自身、宮廷で過ごした日々を懐かしく思い出しておりました。あの頃も、季節はこうして静かに移ろっていきました。汗を流し、暑さと付き合いながら夏を越えると、必ず涼やかな風が吹き始める日が訪れる。それを教えてくれたのは、いつも自然そのものでございました。
そして今、この最終回をお届けできること、深く感謝しております。20年の時を経て、皆様にまたお目にかかれたこと、そしてこうして一つの季節を最後まで語り終えられること——医女として、これほど幸せなことはございません。
さて、最後にご紹介するのは、秋の始まりを告げる果実、梨のお話です。
夏の暑さが少しずつ和らぎ、風に涼しさが混じり始める頃、宮廷の食卓には瑞々しい梨が並ぶようになります。それは季節の変わり目を告げる、自然からの静かな贈りものでした。

なぜ梨は秋に実るのか
季節に合わせて実る果実には、それぞれ意味があると宮廷医術では考えられてきました。梨が秋に実るのは、偶然ではありません。夏の間に消耗した身体、特に乾きやすい「肺」を潤すために、自然がちょうどこの時期に用意してくれた果実——それが梨なのです。
夏に傷ついた肺を潤す
東洋医学では、肺は「乾燥を嫌う」臓とされます。夏の間、汗をかき続けることで身体の潤い——津液——は少しずつ失われ、肺もまた乾きやすくなっています。梨はその瑞々しさそのままに、乾いた肺に潤いを与える食材として、古くから大切にされてきました。
喉を潤す
夏の疲れが残るこの時期、喉の乾きやイガイガとした違和感を覚える人も少なくありません。梨に含まれる豊かな水分は、渇いた喉をやさしく潤し、不調を和らげる助けになるとされてきました。
咳を鎮める
『東医宝鑑』には、梨が咳を鎮める働きを持つと記されています。特に、乾いた咳——喉がイガイガして出る空咳——に対して、梨を煮たり、蒸したりしていただく養生法が、韓国の家庭では今も受け継がれています。
津液を補う
梨のもうひとつの大切な働きは、失われた津液そのものを補うことです。夏の間に消耗した潤いを、この果実がゆっくりと満たしていく。それは薬のように強く効くものではなく、自然の甘みとともに、静かに身体を整えていく力です。
『東医宝鑑』にみる梨の効能
朝鮮時代の医書『東医宝鑑』には、梨が肺を潤し、熱を冷まし、渇きを止める食材として記されています。宮廷では、この教えに従い、夏の終わりから秋にかけて、梨を用いた料理やお菓子が食膳に取り入れられていました。
季節に合わせて実る食べ物には意味がある
夏には汗をかき、気と津液を消耗する。秋にはその肺を、梨が潤す。冬には身体を温める食材が実り、春には芽吹きとともに巡りを助ける食材が現れる——自然は、いつもそのときに必要なものを、ちょうど良い時期に用意してくれています。
宮廷の一話
宮廷では、 秋になると瑞々しい梨が届けられます。
それは甘い果物だからではありません。
夏の暑さで乾いた肺を、 やさしく潤すためです。
自然は、 必要な季節に、 必要な食べ物を実らせます。
それをいただくことが、 最も自然な養生なのです。
チャングムの養生ことば
「季節は、最高の医師です。
秋の梨は、 夏を頑張ったあなたへの 自然からの贈りものなのです。」
シリーズ最終回のあとがき(次回予告)
夏の五味子、参鶏湯、緑豆、そして秋の梨。
宮廷の養生は、いつも自然とともにありました。
では、その自然の恵みを育てる「水」は、昔どのように守られてきたのでしょうか。
朝鮮には、井戸の水を黄土で浄める知恵や、甕(かめ)を用いた水の保存法など、水とともに暮らす文化が受け継がれてきました。
次回シリーズでは、「生命を育む水の養生」をテーマに、韓国に伝わる水の文化と東洋医学の知恵をご紹介します。
どうぞ、次の物語もご一緒ください。



