竹がもっとも竹らしくなる季節に、竹を見つめ直す
前告知
もうすぐ、10月です。
秋が深まり、空気が澄み、夜は少しずつ長くなっていく。
そんな10月を、「竹の月」として過ごしてみたいと思っています。
なぜ、10月なのか。
それは、単なる語呂合わせや思いつきではありません。
竹という植物にとって、10月は、実はとても特別な季節だからです。
竹が、もっとも竹らしくなる季節
竹には、伐採に適した「旬」があることをご存じでしょうか。
春から夏にかけて、竹はぐんぐんと成長し、たけのこから若竹へと姿を変えていきます。この時期の竹は、水分や糖分をたっぷりと含んでいます。
しかし、秋から冬にかけて、竹はゆっくりと休眠期に入ります。とくに9月から11月ごろになると、竹は水を吸い上げるのをやめ、幹の中の水分量が大きく減っていきます。
水分が少なくなった竹は、身が締まり、加工がしやすくなります。糖分やでんぷんも少なくなるため、虫がつきにくく、腐りにくい。だからこそ、良質な竹細工や建材に使う竹は、昔からこの時期に伐り出されてきました。
つまり10月は、
一年でもっとも、竹が「竹らしく」引き締まる季節
なのです。
このシリーズで見える竹の姿――しなやかでありながら、簡単には折れない強さ、内に何も余分なものを抱えない澄んだ佇まい―は、まさにこの時期の竹にこそ、もっとも色濃く現れます。
竹を知るなら、竹を感じるなら、10月ほどふさわしい季節はありません。
竹取物語と、月に帰る季節
もう一つ、10月には見逃せない符合があります。
十五夜、中秋の名月です。
年によって多少前後しながらも、旧暦8月15日にあたるこの十五夜は、9月から10月にかけて巡ってきます。空が澄み渡り、一年でもっとも美しく月が見えるとされる季節です。
このシリーズの第3回で紹介する『竹取物語』を楽しみにしてほしいのですが、
竹の中から現れたかぐや姫は、この十五夜の夜、月の世界へと帰っていきました。
竹が引き締まり、もっとも竹らしくなる季節と、かぐや姫が月へ帰っていく季節――秋という季節が、この二つを静かに重ねているのです。
地から生まれ、地上を生き、そして天へ帰っていく。
その物語の背景に流れているのは、まさに今、私たちが迎えようとしている、この澄んだ秋の空気そのものなのかもしれません。
「竹の月」に、竹を巡る
こうした理由から、10月を「竹の月」と位置づけ、この一ヶ月をかけて、竹にまつわる物語をお届けしていきたいと考えています。
- 地鎮祭で、なぜ竹が四隅に立てられるのか。
- 竹の中を流れる、目に見えない「水」の話。
- なぜ、かぐや姫は竹の中から現れたのか。
- 竹針、電気、そして鬼滅の刃――意外な場所に息づく竹の力。
- 七夕、松竹梅、竹の花に込められた、天との言い伝え。
- 尺八、茶道、竹箒に見る、日々の暮らしの中の竹。
- もっとも霊性が強いとされる、竹の種類。
- 竹炭という、もう一つの浄化の姿。
- 竹刀と竹針――武道と治療をつなぐ、竹の思想。
竹が一年でもっとも澄んだ姿を見せるこの季節に、竹という植物が、日本人の暮らしと精神の中で、どれほど深く根を張ってきたのかを、一緒にたどっていければと思います。
次回、いよいよシリーズの予告編をお届けします。
竹が静かに教えてくれる、天地をつなぐ物語。
10月、竹とともに、少しだけ立ち止まってみませんか。



