2026.8月定例会報告

8月の定例講義では、夏の終わりから初秋に起こりやすい「霍乱(かくらん)」と「湿邪」をテーマに、東洋医学の考え方や鍼灸、灸、食養生について学びました。

目次

夏の終わりは「熱」と「冷え」が同時に起こりやすい

夏は汗をたくさんかくことで、体内の潤い(津液)が不足しやすくなります。

その結果、ドライアイや口内炎、鼻や喉の乾燥など、上半身に「熱」や乾燥の症状が現れる一方で、足の冷えやむくみ、膝の痛みなど、下半身には「冷え」が出ることがあります。

こうした一見反対に見える症状を、東洋医学では「脾胃」、つまり消化吸収を担う中焦の働きと関連づけて考えます。

体の中心である脾胃を整えることが、全身のバランスを整えるポイントになります。

「霍乱」とは?

講義で取り上げられた霍乱は、嘔吐・下痢・腹痛などの急性胃腸症状に、発熱や強い冷えなどが組み合わさった状態です。

東洋医学では、脾が必要なものを上へ運び、胃が不要なものを下へ降ろすという「昇降」の働きを重視します。

そのため治療では、まず中焦の働きを整え、胃腸の機能を回復させることが基本となります。

古典には、激しい嘔吐や下痢、筋肉のけいれん、強い冷えを伴う霍乱に対して、丹田周辺への灸によって陽気を補った症例も紹介されています。

「湿邪」は体を重くする

夏の終わりは湿気の影響も受けやすい時期です。

東洋医学でいう「湿邪」は、体に重だるさやむくみ、頭重感、胸のつかえ、関節のこわばりなどを起こす要因として考えられています。

特に、

  • 頭が重い
  • 体がだるい
  • 足がむくむ
  • 関節が重く感じる
  • 胃腸の調子がすっきりしない

といった症状が続く場合には、湿邪と脾胃の関係を考えることができます。

講義では、体表の反応や経穴の状態を観察しながら、湿邪の影響を見極める方法についても学びました。

経穴は「点」ではなく「つながり」で考える

今回の講義では、経穴を単独で見るのではなく、体全体のつながりとして捉えることの重要性も紹介されました。

たとえば、中脘と足三里は胃腸を整える基本的な組み合わせとして考えられます。

また、後渓は首や背中、陽気の巡りと関係する経穴として、「スマホ首」のような首・肩周辺の不調にも応用できます。

後渓と他の経穴と組み合わせることで、身体だけでなく「気分が落ち込む」「やる気が出ない」といった心身両面の状態を考えることもできます。

つまり、ツボを「ここを押せば、この症状が治る」という単純なものとして捉えるのではなく、体の反応を観察しながら、その人に合った場所や組み合わせを考えることが大切だということです。

お灸で「陽気」を補う

講義の大きなテーマの一つが「補陽」、つまり身体の陽気を補うお灸でした。

古典や臨床経験をもとに、その考え方や応用について解説をしました。

また、貝原益軒の『養生訓』から、季節の変わり目である2月・8月の灸についても紹介しました。

お灸は、直接灸だけでなく、温灸器、棒灸、電子灸、温石など、現在ではさまざまな方法があります。

大切なのは、単に「熱ければよい」ということではなく、その人の体質や状態、安全性を考えながら適切に使うことです。

食事で夏の疲れをケアする

夏に汗をたくさんかいた後は、体の潤いを補うことも大切です。

講義では、東洋医学・薬膳の考え方として「酸甘化陰(さんかんかいん)」が紹介されました。

酸味と甘味を組み合わせて、体の潤いを補うという考え方です。

たとえば、梨に蜂蜜を加えるといった食べ方があります。

また、胃腸が弱っているときには、乾姜(乾燥させた生姜)やネギなど、体を温めながら胃腸を助ける食材も活用できます。

夏の発汗が多かった場合には、水分だけでなく適切な塩分も意識することが大切です。

高齢化社会と鍼灸

今回の講義では、急性の胃腸症状だけでなく、筋力低下や歩行困難などの「痿証(いしょう)」についても取り上げられました。

東洋医学では、筋肉を養う「気血」を生み出すためにも、脾胃の働きを整えることを重視します。

高齢者の筋力低下に対しては、鍼灸だけでなく、太ももや臀部の筋肉を適切に動かすことも重要です。

「食べる」「動く」「温める」という日常の基本を整えることが、長く元気に過ごすための土台になるという点が印象的でした。

まとめ

今回の講義を通して感じたのは、東洋医学では一つの症状だけを見るのではなく、季節・体質・生活習慣・体全体のバランスを含めて考えるということです。

夏の終わりは、暑さによる疲れが残る一方、湿気の影響も受けやすい時期です。

「なんとなくだるい」「胃腸の調子が悪い」「足がむくむ」「体が冷える」といった小さな変化を見逃さず、食事や睡眠、適度な運動、そして必要に応じた鍼灸・お灸などを取り入れながら、秋に向けて体を整えていきたいものです。

今後の定例会の日程

9月定例会  9/20 9/27    

10月定例会  10/4 10/18 10/25

※10/4“豪帝鍉鍼講座”及び実技会 となります。 

初めての方、豪帝鍉鍼を持っていない方には貸出いたします。

人数か少ない場合は、会場は治療院とします。

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