第2回 赤い宝石「オミジャ茶」 ― 五つの味が五臓を守る ―
真っ赤な実から淹れる、酸味の効いたお茶。それが五味子(オミジャ)茶です。見た目の美しさだけでなく、その一杯には、東洋医学の深い知恵が凝縮されています。
五味子とは
五味子は、その名のとおり「五つの味」を併せ持つとされる木の実です。甘み、酸味、苦味、辛味、塩味——本来はひとつの食材がひとつの味に偏るところを、五味子はこのすべてを内に含んでいると考えられてきました。そのため古くから、身体全体を調える貴重な生薬として扱われてきたのです。
五味の意味
東洋医学では、五つの味それぞれが特定の臓腑と結びつくと考えます。酸味は「収める」働きを持ち、汗や気、津液が身体の外へ漏れ出るのを引き締めるとされます。夏に汗をかきすぎて消耗した身体にとって、この「収める」力はまさに理にかなった働きです。
五味子茶を口にすると、まず酸味が舌を刺し、その奥にほのかな甘みや苦味が続きます。この複雑な味わいこそが、身体をひとつの味に偏らせず、全体としてバランスを取り戻す助けになると考えられてきました。
五臓との関係
五味はそれぞれ、肝・心・脾・肺・腎という五つの臓と対応するとされます。五味子は特に「肺」と「腎」を潤し、支える力があるとされてきました。汗によって消耗しやすい肺の潤いを守り、暑さで疲れた腎の力を支える——これが、宮廷で夏に五味子茶が好まれた理由のひとつです。
汗で失われる津液を守る
第1回でお話ししたとおり、夏の汗は津液と気を同時に消耗させます。五味子の酸味には、この漏れ出ていく津液を体内に留める働きがあるとされ、汗をかきすぎた後の火照りやだるさ、喉の渇きを和らげる養生茶として重宝されてきました。
韓国の夏の養生茶
韓国では今も、夏になると各家庭で五味子茶が仕込まれます。冷やして飲むことも多いのですが、宮廷の教えに従うなら、冷やしすぎず常温に近い状態でいただくのが、胃腸にはやさしい飲み方です。
宮廷の一話
王様にも献上された紅いお茶。
一杯のお茶が、 暑さに疲れた身体をやさしく潤します。
チャングムの養生ことば
「薬より先に、 毎日の一杯のお茶を大切になさい。」



